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映画 傲慢と善良 感想

辻村深月先生原作、傲慢と善良を観てきました。9月28日、場所は辻村先生が大学時代を過ごされた西千葉から一番近い京成ローザに向かいました。

主演は藤ヶ谷さん。架役にはピッタリです。

まずは、真実演じる奈緒さんが登場。ストーカーに追われている姿、意味深に花を捨てるシーン。原作の雰囲気通りです。

やはり藤ヶ谷さんは、ドンピシャのはまり役でした。冒頭からマッチングアプリで何人も女性と会い、表面的なことしか聞いてこない女性に飽き飽きした様子を見せたり、女性をオフィスビルから見送ってはすぐに仕事に戻る様子がすごくリアルです。婚活が一段落つくと、高級車を乗り回したり、大学時代の仲間と飲み会したりと架の感じがすごく出ています。無理やり例えるとバチェラーの黄皓さんに久保さんを混ぜたような感じです。

真実もいいですね。最初のデートで、店員に丁寧に挨拶をしながら、にこやかな対応をする姿は、真実が持っている善良さです。その雰囲気のまま、架のキラキラした友達とのホームパーティでも善良さが現れましたが、善良すぎるのか、影では女友達から頑張って架にアピールしていると評されてしまいます。

特に70%というシーンの飲み会の藤ヶ谷さんの演技。元カノのアユに対する未練や結婚したい気持ちへの迷い、真実との穏やかな関係から一変して、大学のチャラついた架の違いを演じていました。原作の場面をそのままに再現して見せました。

その一方、藤ヶ谷さんの演技は良いのですが、あれだけ内容ある小説を2時間で収める制約なのか、傲慢と善良の真実の感じた息苦しさ、地方に閉じ込められ、悪意に翻弄される描写が短いので薄く感じました。また、女友達のいやらしさと真実の感じたアウェー感は表現しきれず、原作と映画の違いがはっきり出ます。

加えて最も大きいのは小説原作の架が真実をどうして選んできたのかに変更があったことです。

原作の真実のいい子で善良な性格は、打算によって得られたものではなくもっと大きな、親や土地から影響を受けたもっと根深いものです。架にアピールしようとしてできた偽物ではなくある程度ベースがある上での人格です。そんな真実を架はいい子として気に入り、金居の家族像を見たことでようやく結婚で欲しいもの、つまり都会で刺激的なライフスタイルを選択するのではなく、平凡な家族として善良で可愛らしい真実と暮らしたかった。そんな架の思いの場面はありません。

なんとなく婚活して、なんとなく関係が続いたから真実のことが見えていなかった。70%をつけた理由も相手をよく見えていなかったから。この理由では架がなぜ婚活で真実を選んだのかがわかりません。何人も、何人も、全然しっくりこない相手とデートしてその中で70点を取る難しさを描写して欲しかったのに、傲慢だったから70をつけたでは片手落ちに感じます。

原作のこの点を変更してしまったことで、二人は浅い関係性ばかりが強調されてしまいます。真実の善良さがあざとさに見えてしまったり、架の持つ傲慢さが強調されすぎて架のチャイルディッシュさが出てしまい、二人の持つ魅力が損なわれたのだと思います。

とはいえ、原作より、もっと真実の成長が描かれていましたし、あれだけの原作をまとめる難しさはかなりあります。

藤ヶ谷さんが原作をどう捉え、演じているかを見るのは楽しかったです。小説を読んでからでないと楽しめない部分も大きいと思います。全部見るのではなく、第一部のストーカーの結末まで読んでみてください。きっと何か刺さり、ずっしりくる辻村先生の作品の良さを味わえるでしょう。

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