ナイルパーチと女子会ー主人公に送る作者からの距離感の取り方とは①
デジタルなものばかりに囲まれるのは疲れるなと思うのですが、外に行くとお金が気になってしまい、気づけば家で本を読むようになりました。読書はお金がかからず、知的な趣味だなと心から思います。今日も自宅でコーヒーを飲みながら記事を書いていこうと思います。
今回紹介するのは柚木麻子さんのナイルパーチと女子会です。
主人公の栄理子は総合商社に勤め、仕事も順調。東京育ち。ルックスも抜群です。それなのに大きな悩みがあります。
仕事は、総合商社。高給で日本を動かす企業で働くのだから、求められる能力の高さに苦しんでいるかと思えばそういうわけでもありません。同僚の杉下に好意を持たれながらも仲良くやっているようです。では、恋愛や結婚に悩んでいるかと思えばそんなこともありません。恋人がいてから少し時間は経っているようですがそれほど気にしているわけでもありません。美女ですぐ男を捕まえられそうです。親との関係も良好で、両親も優秀な人です。父は栄理子の働く商社でポジションを得ています。
ここで登場した関係性。とりわけ女性同士の関係でしょう。今回のテーマもまさにその点に絞っています。
一見華やかで人当たりの良さそうな栄理子ですが、驚くことに同性の女友達がいません。
その理由をこれから書いていこうと思います。
何点か挙げられるのですが、一番大きいのは栄理子自身が、理想的な関係を定義し押し付けてしまうことです。
作中では女友達を作るチャンスが2回ありました。
最大のチャンスは、栄理子が読むお気に入りのブロガーである翔子との出会いにありました。栄理子は総合商社に勤めるだけあり、情報収集能力が半端ではありません。ブログの内容から翔子が近くに住んでいることを突き止め、お気に入りの店を利用し、待ち伏せをするのです。
翔子は最初、美人で商社勤めで気が合いそうな栄理子に好印象を持ちます。翔子は上京してきたこともあり友達に悩むことがあり、出会った当日から意気投合。帰りは翔子の持つ自転車で二人乗りし、送ってあげるなど仲良くなっていきそうな雰囲気です。
そんな瞬間は短く、出会った日の夜から不安定で崩れそうな出来事がありました。
少し連絡を返さなかっただけで大袈裟に心配され、栄理子は住所すら特定し、翔子の家まで突撃してしまいます。当然ながら一緒に暮らす旦那は事情を知り、変な人である栄理子と距離を取るようにアドバイスします。
翔子は旦那に従い、少しづつ距離を置きます。
するとどうなるでしょうか?少し連絡を返さないだけでオーバーに反応する栄理子の気持ちはますます昂り、危うさまで感じられるようになりました。